【水素エネルギー】今の水素燃料は二酸化炭素を排出?!水素の製造法から見るクリーンエネルギーとは

水素エネルギーとひとくくりに言っても、実は様々な製法があります。

【水素エネルギー=環境に優しい】というのは本当でしょうか?

20世紀の発展を支えた化石燃料と異なり、未来のエネルギーとなり得るのか、気になることです。今回は、水素エネルギーに関して、基礎的な記事になりますが、とても重要な点でもあります。

一見、難しいように感じますが、理論を追求するのではなく、よりわかりやすく解説していきます。

さて、水素エネルギーの元となる水素燃料を抽出・生成するためには、いくつかの方法があります。それぞれの基本的な流れを知ることで、環境に優しい水素エネルギーかどうかがわかることでしょう。

環境に優しい?!水素生成方法

環境に優しいと言われている水素エネルギーの抽出方法を見ていきましょう。ここでいう環境に優しいというのは、エネルギーの元となる水素を生成する際も、燃料としての使用時もCO2(二酸化炭素)の排出がなされないというものです。

水素を燃焼した際は、水になるため、そっちだけに焦点があたり、大元の燃料を作る際には?という視点が欠けてしまうこともあります。

水素をエネルギーとして利用する際には、温室効果ガスである二酸化炭素が出ないのは周知の事実ですが、その過程でもどれだけ環境への負荷が少ないかが重要なのです。

水の電気分解

水素を得る際に、最初に思いつく手法が、水の電気分解です。

これは学生時代に行った実験からもわかるように、純水に電気を通すことで、酸素と水素が発生するということからイメージつきやすいでしょう。

ただこの方法で得られる水素量はそれほど多くなく、エネルギーとして活用できるくらい、大量の水素が発生する方法を考えなければいけません。

水の電気分解による水素の生成方法は、大きく2つあり、アルカリ水電解法と固体高分子形水電解法になります。

アルカリ水電解法は、水酸化カリウムを溶かした強アルカリ水に、電流を流して水素を生成するという手法です。陰極(マイナス)側と陽極(プラス)側で取り出せる分子は異なり、陰極では水素が、陽極では酸素が得られます。

実際に大規模水素製造用として工業分野では実績のある生成法です。ただ、アルカリ水電解法の場合は、水素を生成するために、巨大な水槽が必要になり、国土が狭い国や地域では、コストが上がってしまうため、課題もあります。

固体高分子形水電解法は、高分子で作られた陽イオン交換膜を利用して陰極側では水素を、陽極側では酸素が抽出できるといった方法です。固体高分子形水電解法は、アルカリ水電解法と異なり、場所は取りません。しかし、電極や陽イオン交換膜など、別のところでコストが掛かるため、コストを下げるための課題は持っています。

水の電気分解全般に言えることですが、エネルギーを得るために、エネルギーを消費します。つまり、電気を流す際に、別のエネルギーが必要なわけですが、自然エネルギーや再生可能エネルギーを活用することで、トータルでクリーンな生成を可能とします。

熱分解による水素精製

水素は、水を熱することでも得られます。水は常圧環境下では、100℃で気体(水蒸気)となります。

この水蒸気を2,000℃以上の高温下では、水素と酸素に分離する性質があります。これを利用して得るのが水の熱分解による水素の生成です。

しかしながら、2,000℃もの高温環境を用意するのは困難です。2,000℃もの熱を作り出すことも大変なことですが、そんな高温に耐えられる素材も少ないです。

純水な水であれば2,000℃も必要なところ、900℃~400℃の間で水素が得られるような化学反応の組み合わせを活用する試みも実験されています。

例えば、ISサイクルと呼ばれている、ヨウ素と硫黄の化合物を活用し循環させる方法です。

水にヨウ素(I2)と二酸化硫黄(SO2)を反応させ、ヨウ化水素(HI)と硫酸(H2SO4)を合成します。ヨウ化水素を400℃程度で加熱・分解し、水素を得つつ、硫酸を900℃で熱すると酸素と水が取り出せます。

生成するために活用されたヨウ素と二酸化硫黄は、循環の中で、再度得られるため、サイクル内で循環します。

この様に、2,000℃まではいかないものの、それに比べ遥かに低温で水素が得られるのです。

それ以外にも、太陽熱を活用した水素製造プラントの実験もあります。

太陽光を反射鏡で集め、高温の太陽熱(1,400℃程度)を生み出し、水蒸気を分解し、水素を得るプロジェクトがあります。ただこれは、地球上のどこでも可能なわけではなく、サンベルトと呼ばれる太陽光の豊富な地域で実験されています。

大規模なプラントから安価に水素エネルギーが得られるようになれば、国外で製造したものを日本に入れるという青写真も描いています。

完全に自然のチカラと自然素材でエネルギーを得ようとする試みは、地球環境負荷を考えれば、実用化されて欲しい技術です。

光触媒による水素発生

太陽の持つ熱エネルギーだけが水素を作り出すわけではありません。

太陽の持つ光エネルギーと光触媒を活用することで、水から水素と酸素に分解できるのです。簡単に言うと、水に光触媒を入れ、太陽光を当てるという手法になります。

活用する光触媒は、酸化物や窒化物などの半導体粒子です。水の中に入った光触媒に光を当てると、光を吸収することでマイナスの電荷を持った電子とプラスの電荷を持った正孔(ホール)が発生し、酸化還元反応が引き起こされ、水は酸素と水素に分かれます。

理論的には、この様になっても実用化に向けてはまだいくつかの課題があり、研究が進められています。

課題とは、得られた水素と酸素の混合気体から水素を分離する方法やエネルギー変換効率を向上させること、光触媒の選定・探索、面積を広くして、大規模に展開させるなど、山積みです。

研究は進んでおり、NEDOという組織が、人工光合成化学プロセス技術研究組合や東京大学、信州大学とともに、光触媒の開発に成功しており、水素製造のための技術革新が起こることを期待しています。

光触媒による水素製造は、CO2の排出が一切されないまま、水素エネルギーを得る方法です。

環境に負荷がかかる水素製造法

これまで、環境に負荷がかからない形での水素生成法について、いくつか解説しました。

水素エネルギーはクリーンなエネルギーと言いつつも、環境に負荷がかかってしまっている製造方法は少なからずあります。

内容を知っておくことで、それがクリーンなのか、クリーンじゃないのか、教養としても大事になります。

化石燃料から作る

水素を作る方法として、実際に実用化されている中で、化石燃料を改質して製造する方法があります。

実用化されているということは、比較的安価で作ることができ、現在の水素エネルギー社会を支えているといっても過言ではありません。

しかし、化石燃料を活用しているため、完全にクリーンなエネルギーであるかというとそうではありません。製造の過程でCO2を排出することになるため、結果的に環境に負荷を与えてしまっているのです。

さて、化石燃料からどうやって水素を取り出すのでしょうか。

天然ガスやナフサなどを改質することで水素を得ます。方法としては、水蒸気改質法や部分酸化改質法、オートサーマル改質法というのがありますが、天然ガス(メタン)を使った、水蒸気改質法がおおよそ全体の製造数の半分を占めています。

参考までに、CH4+H20→CO+3H2(水蒸気改質法)/CO+H2O→H2+CO2(水性ガスシフト反応)

メタンと水蒸気を700℃~850℃、3~25気圧で反応させると、一酸化炭素と水素が生成されます。生成された一酸化炭素を活用し、水とのシフト反応によって、二酸化炭素と水素を生成します。

生成された水素を燃やせば水になるため、出来上がったあとを活用するだけならば、クリーンなエネルギーに見えますが、実はその裏で、二酸化炭素が排出されているかもしれないなら、ちょっと複雑ですね。

バイオマスによる水素製造

バイオマスによる水素製造は、カーボンニュートラル(生産サイクルの中で、CO2の排出と吸収がプラマイゼロ)であるため、より安価でクリーンなエネルギー生成法が確立されれば、徐々に置き換わっていくと考えられます。

まず、バイオマスについて知っておきましょう。

バイオマス発電という言葉が最近聞かれるようになったとおり、言葉は知っていても内容を理解しているということは少ないです。

具体的にバイオマスとは、製材工場残材・仮設発生木材・家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物、紙くずなど産業廃棄物系の資源や林地残材・間伐材・稲わら、もみ殻、麦わらなどの未利用系資源、短周期栽培木材、牧草、藻類、デンプン、植物油など、生産系資源など、を加熱してガス化する方法と、微生物を利用する方法に分けられます。

加熱して水素を得るは、他の水素生成法で行われている理論と近いものです。

微生物の場合は、微生物の栄養源であるバイオマスが分解される過程で、水素を作るという性質を利用したものです。技術としては確立されていますが、商用化までは、まだまだハードルがあるそうです。

実際に、国内の研究機関や事業体が、バイオマスを活用してエネルギーの生成は国内で行われています。途中のつなぎとして早く確立し、将来的には、カーボンニュートラルではなく、完全にクリーンなエネルギーに期待しておくのがベターです。

副次的な精製方法

水素製造を主目的としているわけではありませんが、他のものを製造する過程で、水素が発生するケースもあります。たくさん作れるわけではありませんが、こういった少しのエネルギーも回収するという心構えが、結果的に良い方向へと進んでいきます。

副産物からの水素抽出

副生水素という、装置産業の製造プロセスの中で、本来の目的となる生産物とは別に、副次的に算出される水素ガスがあります。

ちなみに、苛性ソーダ、石油化学、鉄鋼、石油精製などの製造プラントからは、副生水素が得られます。

ここで発生した水素を回収し、燃料用のガスや、下流部門のプラントで活用することで、無駄なくエネルギーが使えます。この副生水素は、言い換えるのであれば、産業廃棄物の再利用です。

他の形にするだけでなく、自社で組み込むことで小さな循環型社会が生まれます。こういった考えが、地球環境に対して負荷を取り除くというものです。

前項、前々項で取り上げた系統とは異なりますが、考え方によっては重要ですので、この視点は持っておきたいところですね。

まとめ

ひとくくりに水素製造といっても、裏側ではかなりの違いがあります。

実際に実用化されているものから、将来的な期待が高まっているものまで千差万別です。

クリーンなエネルギーの基準をどこにするのか悩ましいところですが、技術が確立してきたあとは、値段にもお得かつ、環境への負担も配慮している状態のクリーンエネルギーを選びたいところですね。

完全にクリーンな水素エネルギーは、まだ研究段階というものもあります。これからも暖かく見守っていきたくなりますね。

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