【論文紹介】水素ガス吸入法による透析患者の酸化ストレスおよびCRPの低減

水素に関する研究論文は、日々増え続けています。

そこで、水素にまつわる研究レポートを紹介し、水素にまつわる認識をアップデートしていこうというのが水素マガジンの論文紹介記事の目的です。

なお、医療に関する内容ですので、繊細な判断をする必要があります。

本記事で紹介する内容は、特定の商品を指すのではなく、水素の持つ力や特性だと思っていただくと良いでしょう。

人体に対する作用は、その人の状態や体質によっても変わってきます。
「同じ症状に悩まされているから単純に導入すれば治る」といったような安易な考えはお控えください。

水素に対する知識をきっちり深め、選択肢のひとつとして、ポジティブに考えられるようになれば幸いです。

今回、紹介する論文は『水素ガス吸入方による透析患者の酸化ストレスおよびCRPの低減』です。

『日本透析医学会雑誌』のホームページでも詳しくはご確認できますし、今回参照した論文はこちらになります。

水素ガス吸入方による透析患者の酸化ストレスおよびCRPの低減

著者名(敬称略):
寒川昌平(1)/松浦明日香(1)/須賀裕希(1)/寒川由衣(1)/小島環生(2)/中村仁(3)

(1)は、そうかわ透析シャント腎クリニック
(2)は、トーホージャパン
(3)は、株式会社トライズ
の所属です(論文発表時)。

論文掲載日時:2021年

掲載誌:日本透析医学会雑誌/54巻(2021)9号

論文URL(PDF):
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/54/9/54_433/_pdf/-char/ja

論文の要約

透析患者は、慢性的に酸化ストレスが高い。この酸化ストレスの高さが、透析患者の炎症反応を過剰にさせ、様々な合併症を引き起こすことや重篤化の関連性が指摘されています。

論文の趣旨としては、水素ガスを吸入することで、透析患者の酸化ストレスに及ぼす影響を検討したものです。

酸化ストレスだけでなく、抗酸化力およびCRP(C反応性蛋白)を評価指標とし、それぞれを測定することで評価をします。

水素ガス吸入のルールは、透析開始の5~10分前に水素ガス吸入を開始し、透析終了後も同じ程度の時間、水素ガスの吸入を行いました。6回ある透析機会(2週間)においてすべて行い、その後は通常の透析に戻して、効果の持続性も検討。

血液透析者6名へ、上記の内容を行いました。

透析患者への水素ガス吸入の詳細と研究結果

今回の研究で活用した機器や測定評価方法は以下のとおりです。

・ディアクロン社製のフリーラジカル解析装置「FREE Carrio Duo」:活性酸素代謝物(d-ROMs)及び生物学的抗酸化力(BAP)の測定
・水素ガス吸入器:水素発生機 TOHO HYDROGEN HD-500:毎分500mlの水素ガス、水素濃度99.99%。鼻腔カニューラを使用。
・CRPはラテックス凝集比濁法で測定

水素ガス吸入は透析機会6回連続で行い、d-ROMsとBAPは、透析開始時と終了時に採血し測定。CRPは透析開始時に採血。
水素ガス吸入を2週間連続で行った後に、同期間通常の透析に戻して、同様にそれぞれを測定。
統計学的処理は、エクセルの分析ツールを用い、t検定(てぃーけんてい)を行ったと発表されています。

この実験結果の発表は以下のように示されています。

透析中の水素ガス吸入によって、酸化ストレスは減少し、さらに水素ガス吸入中止後、2週間時点での測定も持続した。抗酸化力は水素ガス吸入の影響は見られなかったと報告しています。また、透析前後での体重の変化や血圧変化尿素除去率、Kt/V(透析量)への水素吸入の影響は特に認められなかったとのことです。

また、CRPに及ぼす水素ガスの影響においては、酸化ストレスと同様に減少が見られ、水素ガス吸入を中止した後2週間後も持続したことが報告されています。

実験研究の考察

水素ガス吸入によって、酸化ストレスの増加が抑制される報告はこれまでなかったようで、本研究によって示されたのは良い点だと考えられる。

さらに、水素ガス吸入法を採用することで、小規模の透析施設や家庭においても安価に水素ガスが接種でき、酸化ストレスを低減できることが明らかになりました。さらに、被験者は水素ガスを吸入しているという自覚症状がなく、研究途中での脱落者がいなかったことから、水素ガス吸入療法は、患者への負担が少ないと考えられると報告しています。

課題と展望

今回の実験研究において、被験者が6名と母数が少ないため、今後もデータ収集をし、同様の評価報告がなされることで、信頼性が増していくと考えられます。

また、今回は透析前と後5分~10分の水素ガス吸入を行いましたが、どの程度の吸入(時間もさることながら、水素ガス発生量や濃度も含め)がベストなのかを検討することが研究や応用の発展にもつながることでしょう。

そして、透析患者をターゲットとして実験を行っていますが、酸化ストレスが増加する状況は他にも多くあり、別の症例においても研究が気になります。

そのうえで、透析治療の場面では、合併症予防や予後改善の効果報告も待たれますね。

専門用語解説

本記事や論文で出てきた専門用語の一部を解説します。

d-ROMs:活性酸素代謝物

活性酸素代謝物 (Reactive Oxygen Metabolites; ROMs) は、細胞の代謝プロセスで生成される酸素由来の不安定な化学種です。これらは、通常の酸素分子が電子の取り込みや放出により変化して生じます。

代表的な活性酸素代謝物には以下のような種類があります。

【スーパーオキシドアニオン (O2-)】
酸素分子に電子が1つ加わって生成されるもの。ミトコンドリアや白血球での代謝プロセス中に生成されます。

【過酸化水素 (H2O2)】
スーパーオキシドアニオンが他の酵素と反応することで生成されます。相対的に安定しており、細胞内で一定期間存在することができます。

【ヒドロキシラジカル (•OH)】
過酸化水素が金属イオンなどの触媒作用により分解される際に生成される非常に反応性の高い活性酸素代謝物です。

【一重項酸素 (1O2)】
エネルギーが高い酸素分子。通常の酸素とは異なり、化学反応性が強いです。

活性酸素代謝物の生成源

これらの代謝物は、外部からのストレスや体内の生理的プロセスにおいて生成されます。一般的な生成源としては、次のものが挙げられます。

代謝反応: ミトコンドリアでのエネルギー生成プロセス
免疫反応: 白血球が感染と戦う際に生成
環境要因: 紫外線、放射線、汚染物質、薬品など

活性酸素代謝物と健康

活性酸素代謝物は通常、抗酸化酵素や分子によって適切に制御されていますが、過剰に生成されると細胞や組織を損傷し、酸化ストレスを引き起こします。これにより、炎症、老化、心血管疾患、癌などの病気のリスクが高まります。

生物学的抗酸化力(BAP)

生物学的抗酸化力(Biological Antioxidant Capacity)は、活性酸素代謝物やフリーラジカルが引き起こす酸化ストレスに対して体が防御する能力のことを指します。

抗酸化力は、外部から摂取した抗酸化物質や、体内で作られる抗酸化酵素によって維持されています。

主な抗酸化システム

【酵素による抗酸化システム】
・スーパーオキシドディスムターゼ (SOD): スーパーオキシドアニオン (O2-) を過酸化水素 (H2O2) に変換する酵素
・カタラーゼ (CAT): 過酸化水素を酸素と水に分解する酵素。主にペルオキシソームで機能する
・グルタチオンペルオキシダーゼ (GPx): 過酸化水素や有機過酸化物を無毒化する酵素。グルタチオンというトリペプチドを利用して反応を進める

【非酵素性の抗酸化システム】
・水素:ヒドロキシルラジカルを選択的に除去する
・ビタミンE:脂溶性の抗酸化物質で、細胞膜などの脂質部分での酸化を防ぐ
・ビタミンC:水溶性の抗酸化物質で、さまざまなフリーラジカルを直接的に除去する
・グルタチオン:トリペプチドであり、体内で生産される。GPxの補助をするほか、酸化還元反応で他の抗酸化物質の再生も担う
・フラボノイドやカロテノイド: 植物に多く含まれ、抗酸化作用を持つ天然の化合物

抗酸化力の重要性

抗酸化力は、体内で活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスのレベルを低減し、細胞や組織を損傷から守る上で重要な役割を果たします。

酸化ストレスは老化をはじめ、多くの病気と関連しています。したがって、適切な抗酸化物質の摂取や酵素の活動を維持することは、これらの病気の予防や健康維持に役立ちます。

C反応性蛋白(CRP)

C反応性蛋白 (C-reactive protein, CRP) は、炎症や感染症が起こると肝臓で産生されるタンパク質です。

血中のCRP濃度は、急性期反応(身体が感染や外傷、炎症に応答する過程)の一部として増加します。

そのため、臨床検査でCRP値を測定することで体内での炎症レベルを知ることができます。

CRPの特徴と機能

【産生と制御】
CRPは、主に肝臓で合成されます。インターロイキン-6 (IL-6) や腫瘍壊死因子アルファ (TNF-α) などの炎症性サイトカインが分泌されると、肝臓でのCRP産生が刺激されます。

【機能】
CRPは、細菌や組織の損傷などに反応して増加し、免疫システムをサポートします。

病原体や壊れた細胞の表面に結合し、補体系を活性化させたり、マクロファージが異物を認識するのを促進したりすることで、免疫応答を強化します。

【CRPの臨床的意義】

急性炎症の診断: 細菌感染症、炎症性疾患、外傷などの急性炎症がある場合、CRPレベルが迅速に上昇します。これにより、病態を診断したり、治療効果をモニタリングしたりするために利用されます。

慢性炎症と心血管疾患:慢性的な炎症が関与する疾患では、CRPの軽度の持続的上昇が見られます。

t検定

t検定(t-test)は、2つのグループ間で平均値の差が統計的に有意かどうかを検定するために使われる統計手法です。t検定はデータが正規分布していると仮定して行われ、特にサンプルサイズが小さい場合に有用です。

今回の実験では、被験者6名という少ない対象にしたため、この統計手法を採用したと考えられます。

Kt/V

「Kt/V」とは、主に透析療法において使われる、透析の効率や有効性を評価するための指標の一つです。

この指標は、透析中に除去される尿素の量を、患者の尿素生成量と血中尿素濃度に関連付けることで、透析がどれだけ効果的であるかを表します。

Kt/Vの意味

・K (Clearance): 尿素のクリアランス率を表し、単位時間あたりに透析装置が尿素をどれだけクリア(除去)できるかを示します。単位は通常、mL/min(ミリリットル毎分)です。
・t (Time):透析時間を表し、単位は通常、分または時間です。
・V (Volume):患者の体液の体積、つまり尿素が分布している体液の全体積を表します。これは通常、リットル(L)で表されます。

まとめ

透析治療をはじめ、酸化ストレスが高まる状態になるケースは多数あります。今回の研究のように、水素ガス吸入を活用し、酸化ストレス増加を抑制できる可能性が、様々なところで見えてくるでしょう。

その結果、様々な症状の悪化や別の病気も回避できるかも知れません。

何かしらご病気を抱えている人はもちろん、未病を防ぎたいという方も水素は効果的なツールかも知れませんね。

実際に使って、体感している人は、より確信が入るでしょうし、悩んでいる方も様々な知識をインプットし、水素の効果に期待してはいかがでしょうか。

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