【那須美行先生インタビュー】微生物を見続けて38年 那須美行氏が水素研究にたどり着くまで

今回、一般社団法人 国際水素規格協会のご厚意により、微生物研究の第一人者である那須美行先生にインタビューさせていただきました。
水素マガジンとしてもこのような機会に恵まれ、とても光栄に思っております。

前編は、那須美行先生のこれまでの歩みを中心に
後編は、那須先生の微生物と水素にまつわる研究をテーマに

インタビュー原稿を再編して、読み物として充実した形でお届けします。

那須先生へのご質問やお仕事の依頼は、一般社団法人 国際水素規格協会が受け持っておりますので、
必要な方はそちらまでお問い合わせください

那須美行先生インタビュー:後編

38年間、臨床検査技師として微生物検査の現場に立ち続けてきた那須美行氏。

感染症が疑われる患者の検体を調べ、原因となる病原菌を見つける。見つかった菌の性質を確認し、どの薬剤が有効かを調べる。そうした日々の積み重ねの中で、那須氏は多くの微生物と向き合ってきました。

前編では、幼少期の病の経験から臨床検査技師を志し、医療現場で微生物検査に携わり、水素那須氏の歩みをたどりました。
前編の記事をご覧いただくと後編の本記事もより理解が深まります。

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『【那須美行先生インタビュー】微生物を見続けて38年:病を経験した少年が、臨床検査技師になるまで』

後編では、その経験がどのように水素研究へつながっていったのかを見ていきます。

きっかけの一つは、薬剤耐性菌という感染症医療の大きな課題でした。

従来の抗菌薬が効きにくい菌が広がっていく。新しい薬剤の開発にも時間がかかる。

医療現場で微生物と向き合ってきた那須氏にとって、それは遠い世界の問題ではありませんでした。

そんな中で、那須氏は「水素」という物質に関心を持つようになります。

水素は、健康や医療の分野でも研究が進められている一方、まだ十分に解明されていない部分も多い存在です。

だからこそ、那須氏は「本当に何が起きるのか」を自分の目で確かめようとしました。

最初の実験は、ある意味で素朴な疑問から始まりました。
「細菌に水素を与えると、細菌は元気になるのではないか」

その一言が、臨床検査技師としての那須氏の探究心に火をつけることになります。

薬剤耐性菌という現場の課題

薬剤耐性菌という現場の課題

那須氏が水素に関心を持った背景には、薬剤耐性菌への強い問題意識がありました。

薬剤耐性菌とは、抗菌薬が効きにくくなった細菌のことです。抗菌薬は感染症治療に欠かせない存在ですが、長い年月の中で、薬剤に耐性を持つ菌が現れるようになりました。

医療現場では、感染症の原因菌を特定し、その菌にどの薬剤が効くかを調べる薬剤感受性試験が行われます。那須氏は、そうした検査の現場に長く携わってきました。

微生物検査を行う立場から見ると、薬剤耐性菌の問題は単なるニュースではありません。

実際に、どの薬剤が効くのか。
治療の選択肢は残されているのか。
感染症の拡大をどう防ぐのか。

そうした問いと日々向き合う中で、那須氏は従来の抗菌治療法だけでは解決しきれない課題を感じていたといいます。

那須氏の問題意識は、明確でした。

薬剤耐性菌の増加という現実的な危機に対して、これまでとは異なる新しいアプローチはないのか。

もちろん、医療として何かを実用化するには、基礎研究、非臨床試験、臨床試験など、長い検証の過程が必要です。安易に「効く」と言えるものではありません。

それでも、未知の可能性を持つ物質について、まずは観察し、確かめ、検証していくことはできます。

その候補として、那須氏が関心を持ったのが水素でした。

薬剤耐性菌という現場の課題

水素という未知の物質に向けられた問い

水素という未知の物質に向けられた問い

水素は、私たちにとって身近な元素です。

一方で、生体内でどのように働くのか、どのような条件で何が起きるのかについては、いまも研究が進められている分野です。

那須氏が水素について調べ始めた当初の問題意識は、従来の抗菌治療法では解決できない感染症課題に対して、水素という未解明の物質を用いた新しいアプローチが可能かどうか、という点にありました。

そこには、薬剤耐性菌の増加という現実的な課題と、水素という無機物が持つ未知の生物学的作用への科学的な好奇心がありました。

那須氏は、長年にわたって微生物学やウイルス学に関わってきました。だからこそ、「水素が微生物に対して何らかの影響を及ぼすのか」という問いは、単なる思いつきではなく、臨床検査技師としての経験に根ざしたテーマでもありました。

ただし、ここで重要なのは、那須氏が最初から結論を持っていたわけではないことです。

水素に抗菌作用があると決めつけていたわけではありません。

健康効果を前提にしていたわけでもありません。

まずは、細菌に対して何が起きるのかを確かめようとしたのです。

研究の出発点は、断定ではなく、問いでした。

水素という未知の物質に向けられた問い

「細菌は水素で元気になるのか」

細菌は水素で元気になるのか

水素研究のきっかけについて、那須氏は印象的なエピソードを語っています。

あるとき、水素に詳しい知人から、こう言われたといいます。

「細菌に水素を与えると、細菌が元気になるから、やめた方がよい」

その言葉を聞いた那須氏は、本当にそうなのかを確かめたくなりました。

臨床検査技師として長年、細菌を見続けてきた立場からすれば、「細菌が元気になる」と言われれば、実際に試してみたくなるのは自然なことだったのかもしれません。

那須氏は、実験を行いました。

細菌に水素を与えたとき、何が起きるのか。

本当に細菌は活発になるのか。

それとも、別の変化が起きるのか。

結果は、那須氏にとって予想外のものでした。

少なくとも、那須氏が行った試験条件下では、細菌の発育に抑制的な変化が見られたといいます。

那須氏はこのときの経験を、単なる偶然ではなく、さらに調べる価値のある現象として受け止めました。

科学の歴史には、偶然のように見えた現象を見逃さず、検証することで発見につながった例があります。那須氏もまた、目の前に現れた変化をそのまま流さず、さまざまな細菌や条件で確認を進めていきました。

ここで大切なのは、最初の実験結果だけで結論を出さなかったことです。

驚きはあった。
手応えもあった。

けれども、それだけでは研究にはなりません。

検査の現場で培ってきた姿勢と同じように、那須氏は条件を変え、比較し、再現性を確かめようとしました。

細菌は水素で元気になるのか

偶然を、検証可能な知見へ変える

偶然を、検証可能な知見へ変える

微生物検査では、結果を一度見ただけで判断することはできません。

本当にその菌なのか。
検体に混入がなかったか。
培養条件は適切だったか。
同じ条件で再現するのか。
別の菌でも同様の傾向が見られるのか。

那須氏が水素に関する現象を確認した後に行ったのも、こうした検証の積み重ねでした。

細菌検査では、接種用菌液を調整し、水素を含む被験物質溶液と接触させ、時間ごとに培地へ塗抹して培養し、発育の有無や集落数を確認する方法が用いられました。

また、水素を添加しない条件を陰性対照として設定し、微生物の自然増殖の有無を比較したとされています。

さらに、標準菌株、薬剤耐性菌、食中毒関連菌など、対象を変えながら抗菌作用の評価を進めました。

ウイルスについては、外部の受託試験機関に依頼し、複数のウイルス株と宿主細胞を用いたin vitroの評価試験が行われました。

ここで注意すべきなのは、これらの試験はあくまで特定の条件下で行われた研究であり、そのまま人が摂取した場合の健康効果を示すものではないという点です。

試験管内で見られる現象。
動物で確認される影響。
人を対象とした臨床研究で示される結果。
これらは、それぞれ段階が異なります。

那須氏自身も、試験管内の研究結果と人が摂取した際の結果は同じものではなく、人体への実際の影響を評価するには、動物実験やヒトでの臨床試験が必要であると説明しています。

この線引きは、水素研究を語るうえで欠かせません。

偶然を、検証可能な知見へ変える

すべてが思い通りに進んだわけではない

すべてが思い通りに進んだわけではない

研究では、期待通りの結果が出ることばかりではありません。

那須氏の水素研究においても、すべての対象で同じような結果が得られたわけではありませんでした。

たとえば、HIV(エイズウイルス)に関しては、当初の方法では再現できなかったといいます。

那須氏は、HIV(エイズウイルス)については、細胞系を用いた評価とは別に、ウイルス蛋白質の酵素活性などを用いた判定方法が良いのではないかと考えています。

このような「うまくいかなかったこと」は、記事としては一見、弱点のようにも見えるかもしれません。

しかし、研究の信頼性を伝えるうえでは、むしろ重要です。

すべてに効いた。
何でも抑えた。
例外はない。

そのような語り方は、分かりやすい反面、科学的には慎重さを欠きます。

一方で、再現できなかった対象があること、評価方法の見直しが必要なこと、今後の検証課題が残っていることを明らかにする姿勢は、研究を誠実に伝えるうえで大切です。

那須氏の水素研究は、完成された答えを一方的に提示するものではありません。

観察し、検証し、うまくいかない結果も含めて次の問いへ進む。

その姿勢は、臨床検査技師としての長年の経験と重なります。

すべてが思い通りに進んだわけではない

水素含有抗微生物剤という発想

水素含有抗微生物剤という発想

那須氏は、研究で得られた知見をもとに、「水素含有抗微生物剤」に関する特許取得へと進みました。

特許の対象となるのは、水素を含む組成物が、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物に対して作用を示すという技術的な発想です。

那須氏は、水素を使って細菌やウイルス、カビなどの微生物を抑える方法に関するものだと説明しています。

特許取得までには、約5年を要したといいます。日本だけでなく、イギリス、オーストラリア、香港、カナダでも権利化に向けた取り組みが行われました。

那須氏にとって、特許は単なる権利の取得ではありませんでした。

研究成果を社会に届けるための土台であり、医療、食品、農業、日用品など、さまざまな分野への応用可能性を検討するための出発点でもありました。

ただし、ここでも重要な線引きがあります。

特許があることと、人への健康効果が認められていることは同じではありません。

那須氏自身も、特許は特定の組成物や製造方法、技術に関する権利であり、人体における臨床的な健康効果の有無は、特許段階では評価対象ではないと説明しています。

つまり、特許は「技術としての新規性や権利範囲」を示すものです。

一方で、人に対する効果を示すには、別の段階の検証が必要になります。

この点を区別することは、水素研究を正確に伝えるうえでも、商品や健康情報を誤解なく受け取るうえでも重要です。

水素含有抗微生物剤という発想

水素研究で言えること、まだ言えないこと

水素研究で言えること、まだ言えないこと

水素に関する研究は、近年さまざまな分野で進められています。

抗酸化、抗炎症、神経保護などをめぐる基礎研究や臨床研究が行われ、医療や健康分野での応用可能性に関心が寄せられています。

一方で、那須氏は水素について発信する際、研究者として慎重であるべきだと語ります。

最も大切なのは、「断定」を避けること。

そして、「観察されたこと」と「解釈すること」を分けること。

この姿勢は、水素に限らず、健康情報全般において重要です。

ある試験で変化が観察されたとしても、それがすぐに人への健康効果を意味するわけではありません。

試験条件、対象、測定方法、比較対象、再現性、臨床的な意味。そうした要素を確認しなければ、結果の受け止め方を誤ってしまいます。

那須氏は、商品性能データと人への健康効果データの違いについても説明しています。

商品性能データとは、製品そのものの物理的・化学的性質や成分、測定値などを示すものです。

一方、人への健康効果データとは、ヒトの健康状態や生理機能への影響を評価するものであり、臨床試験や統計解析が必要になります。

たとえば、水素発生量や酸化還元に関する数値は、製品の特性を示す指標になり得ます。しかし、その数値が高いことだけで、人への健康効果が高いと断定することはできません。

数字は大切です。

しかし、数字は条件とセットで見なければなりません。

どのような環境で測定されたのか。
どの時間で測定されたのか。
何と比較したのか。

人を対象としたデータなのか、試験管内のデータなのか。

こうした確認を行うことが、健康情報を正しく受け取るために必要です。

水素研究で言えること、まだ言えないこと

期待が先行する分野だからこそ、慎重に伝える

期待が先行する分野だからこそ、慎重に伝える

水素は、多くの可能性が語られる分野です。

健康、美容、医療、介護、スポーツ、食品、農業。さまざまな領域で関心が寄せられているからこそ、情報も広がりやすくなります。

しかし、情報が広がりやすい分野では、期待が先行することもあります。

那須氏は、水素について語るとき、「可能性」という言葉を用いるといいます。断定ではなく、観察された事実を述べることを重視しているからです。

研究とは、可能性を追う営みです。
けれども、可能性は事実そのものではありません。
仮説は、検証を通じて少しずつ確かめられるものです。

そして、研究段階の結果と、一般の人が日常的に利用する商品とは、分けて考える必要があります。

この慎重さは、那須氏の研究を弱く見せるものではありません。

むしろ、研究を信頼できる形で社会へ伝えるための土台になります。

「言えること」と「まだ言えないこと」を分ける。
「観察されたこと」と「解釈」を分ける。
「商品性能」と「人への健康効果」を分ける。

この線引きがあるからこそ、水素研究の可能性を、過度な期待ではなく、冷静な関心として伝えることができます。

期待が先行する分野だからこそ、慎重に伝える

研究を社会へ届けるために、ナスメディックを設立

研究を社会へ届けるために、ナスメディックを設立

那須氏は、研究成果を研究室や医療現場だけで終わらせるのではなく、社会に届けることを目指してナスメディックを設立しました。

その背景には、水素を活用した抗微生物技術の研究成果を、医療現場だけでなく、日常生活や産業分野でも活用できる可能性を探りたいという思いがあります。

ナスメディックの理念には、人と地球の未来のために、確かな製品を提供すること。変革への情熱を持ち、新しい事業展開と製品開発に取り組むこと。そして、世界の人々の豊かな毎日を支えながら、100年企業を目指すことが掲げられています。

那須氏にとって、研究者としての活動と企業経営には違いがあります。

研究者は、未知の現象を解明し、学術的な知見を生み出すことを目指します。

一方で、企業は、その知見を製品やサービスとして社会に届ける役割を持ちます。

研究成果を社会に届けるには、科学的に正確であることだけでなく、一般の人に分かりやすく伝えることも必要です。

那須氏は、研究成果を一般の方へ届ける際に最も大切にしていることとして、「科学的に正確で安全な情報を、一般の人にも分かりやすく、社会的価値につなげて届けること」を挙げています。

研究の言葉を、そのまま社会に届けるだけでは伝わりません。

一方で、分かりやすくするために誇張してしまえば、研究の信頼性は損なわれます。

その間をどうつなぐか。

ナスメディックの挑戦は、研究成果を社会で使える形に翻訳する挑戦でもあります。

研究を社会へ届けるために、ナスメディックを設立

研究から、日常生活で取り入れられる形へ

研究から、日常生活で取り入れられる形へ

那須氏の研究は、やがて「日常生活の中で水素を取り入れられる形」へと向かっていきます。

その一つが、水素サプリメントという形です。

ただし、ここでも大切なのは、研究成果と商品を同一視しないことです。

研究段階で示された現象。
特許として保護された技術。
商品としての性能データ。
そして、人が摂取した場合の健康効果。

これらは、それぞれ異なる段階にあります。

水素サプリメントとして商品化する際には、研究の可能性だけでなく、原材料、製造、品質管理、測定条件、安全性、表示、広告表現など、さまざまな要素を慎重に確認する必要があります。

那須氏も、健康食品を紹介する際には、研究成果を過大に表現せず、誤認につながらない形で伝える必要があると考えています。

その意味で、那須氏の水素研究は、商品化によって終わるものではありません。

むしろ、商品化は新しい問いの始まりです。

どのような形なら、日常生活に取り入れやすいのか。
どのような情報を示せば、消費者が冷静に判断できるのか。
どこまでが研究で言えることで、どこから先は今後の検証が必要なのか。

それらを一つひとつ整理しながら、研究と社会の距離を縮めていく。

そこに、那須氏とナスメディックの現在地があります。

研究から、日常生活で取り入れられる形へ

微生物を見続けた38年の先に

微生物を見続けた38年の先に

水素研究にたどり着くまでの那須氏の歩みを振り返ると、そこには一貫した姿勢があります。

見えないものを見ること。
違和感を見逃さないこと。
最初の判断を疑うこと。
結果を検証すること。

そして、未知の領域に恐れず挑戦すること。

幼少期に病を経験し、顕微鏡と出会った少年は、やがて臨床検査技師となり、38年間にわたって微生物を見続けました。

その経験が、薬剤耐性菌という課題への問題意識を育てました。

そして、水素という未解明の可能性に目を向けるきっかけになりました。

那須氏の研究は、まだ多くの検証を必要としています。

水素研究そのものにも、解明されていないことは多く残されています。

だからこそ、那須氏は断定を避け、観察されたことと解釈を分け、研究結果と商品広告の線引きを大切にしています。

微生物を見続けて38年。
その時間の先にあるのは、単なる商品開発ではありません。

未知の現象を見つめ、確かめ、社会へ届けるための挑戦です。

微生物を見続けた38年の先に

次回は、那須氏の研究思想がどのように商品化へつながっていったのかをたどります。

水素サプリメント「スーパーエッグプラH」の開発背景と、那須氏が理想とする水素サプリメントのあり方について聞きます。

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